G20記者会見でトランプ米大統領が「日米安保改正」を明言した裏側

6/29、トランプ米大統領が、G20サミット閉幕後に大阪市内で行った記者会見で『日米安全保障条約は「不公平な合意だが、破棄することは全く考えていない」と述べ』続けて『安保条約の片務性をわれわれは見直す必要がある』と安倍総理に伝えたと明言しました。
米国側のこの発言の裏には、米国の世界情勢判断の根幹の部分において、認識の変化が発生している事を示しています。
この変化のきっかけは911で、トランプ大統領就任前の北朝鮮のSLBM発射実験成功が拍車を掛け、ここ1年ほどの世界情勢の変化(対中貿易戦争等も含む)を考慮し、前提を変化させたと考えられます。
この変化を理解する上で最も重要なセンテンスは、先日トランプ大統領がFOXビジネスネットワークのインタビューの中で発言した『can watch it on a Sony televisio』です。
直訳すると「ソニーのテレビで(米軍の戦闘を)見ることが出来る」です。
朝日新聞等は「彼らができるのは攻撃をソニーのテレビで見ることだ」と訳していますが、これだと、発言の裏側が理解できません。
重要なのは「ソニーのテレビで(米軍の戦闘を)見ることが出来る」、すなわち「日本が戦争に巻き込まれないで、米国の戦争をTVで視聴することが可能だ」というニュアンスです。
その前段でトランプ大統領は「日本が攻撃されれば、米国は第3次世界大戦を戦う。我々は命と財産をかけて戦い、彼らを守る」と発言しています。
米国から入ってくる情報との整合性を取ると、米国の「世界情勢の判断」基準が変ってきたことが分ります。
米国はこれまでのように対中、対北朝鮮の想定のみならず、日本抜きにして米国が戦争に突入する事態=「米国本土が直接狙われる可能性」を本気で視野に入れ始めた事を、この発言は示唆しています。
日米安保はあくまで「中国封じ込め」「ロシアの南下防止」「北朝鮮の暴走抑制」に主眼が置かれています。
もともと「日本が戦場になることはあっても、米国本土は安全」という前提条件があったのです。
現在、在日米軍経費の3/4を日本が負担しています。
金銭面での米国負担は、他の国への駐留と比べれば極めて軽微で済んでいます。
戦略的にも、アジア太平洋地域を考えると、日本が防波堤ならば米国にそれほど負担はありません。
これらの条件を考えると、米国にとって最も信頼できる同盟国である日本に無理を強いる必要は無いのです……前提条件が変わらなければ。
ここへ来て、状況が変りつつあります。
米国は世界の警察を本気で辞めようとしています。
そうなると、これまで押さえ込んでいた潜在的な敵が動き始めます。
大陸間弾道弾や無人機による攻撃、国家が主導するテロ等の危険が大幅に増えるのです。
これを押さえ込むために軍事力を使うと、アジア等ではプレゼンスが足りなくなります。
同時に「米国軍のみが攻撃される可能性」が飛躍的に高まります。
これを最も効率的に解消する方法は、日米安保を改正して米国軍が攻撃を受けたときに、日本も援護する形を整えることです。
日米安保が片務的な内容なのは事実です。
これまで日本は米国の軍事力に寄りかかった状態で、戦後復興と経済成長を遂げてきました。
たまたま日米の利害が一致していたから発生した幸運だったのです。
米国は今、日本に“普通の国家”になる事を要求しています。
普通の国とは、自国のことは最低でも自国で守る、同盟国とは共同で戦う国のことです。
日本は、今後の世界情勢も視野に入れた上で、様々な「戦後スキームからの脱却」を求められているのです。

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