対韓措置と安全保障貿易管理とフッ化水素

7月4日に実施された「特定品目の包括輸出許可から個別輸出許可への切り替え」ですが、これはあくまで優遇措置の廃止であり、輸出禁止や輸出制限ではありません。

安全保障管理貿易の目的は、大量破壊兵器等の拡散防止で、今回の優遇措置の廃止はこの「大量破壊兵器等の拡散防止」の観点からの対応です。

見直し対象の特定3品目が、すべて半導体製造に関連する品目なので、どうしてもマスコミ報道は「対韓規制」「対韓報復」と理解しがちなのですが、純粋に安全保障の面から見ても、このまま野放し状態は不味かったのです……「高純度のフッ化水素」は特に。

フッ化水素は、半導体のエッチングガスとしても使用されます。
半導体の製造には欠かせない品です。

しかし同時に、フッ化水素は原子炉燃料や核兵器の原料である「六フッ化ウラン」を精製する工程でも使用されます。

おおまかな工程は以下のようになります。

①ウラン鉱石

②ウラン精鉱(イエローケーキ)

③六フッ化ウラン

②から③の転換工程において、フッ化水素ガスが必要となります。

①~③の工程は複数の方法がありますが、いずれの方法でもフッ化水素は必要です。

このように、フッ化水素は「核兵器の原料の一つ」でもあります。

これに加えて、韓国へ輸出されているフッ化水素の動向が、極めて異常な状況なのです。

下図は「2010年以降の対韓フッ化水素輸出量の推移(月単位)」です。

文政権になって、明らかに異常な輸出量の伸びを示しています。

朴槿恵政権時のピークと比べても約4割増、直近の最低輸出量だった2017年1月の2倍以上の輸出量になっています。
韓国の半導体製造量が直近で2倍になった形跡はありませんので、当然ですが増えた輸出分は「韓国の備蓄」になっているか、もしくは「どこかへ横流しされた」の2択になります。

文政権になってからの「国際的な経済制裁ルール破り」「瀬取の横行」等を鑑みると、この増加したフッ化水素輸出量分が、何らかの形で北朝鮮に流れている可能性が、現時点では拭いきれません。

このような事実を前提として「特定品目の包括輸出許可から個別輸出許可への切り替え」はおこなわれました。
本来なら、もっと早い段階(輸出量の異常急増が明確になった半年くらい前)で行っておくべきだったのでしょうが、残念ながら当時では「対策をする大義名分」がありませんでした。

今回、特定3品目の個別輸出許可への切り替えは、国際社会の要請でもあります。
この対応をしなければ、最悪の事態になったときに「日本は北朝鮮の核開発を事実上黙認した」位の酷い言われ様は覚悟する必要がありました。

その点も考えると、タイミング的にはギリギリのラインだった可能性もあります。

いずれにしても、特定3品目の個別輸出許可への切り替えは明らかに「安全保障管理貿易の大義」に乗っ取った、適切な措置だと言えます。

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