①今回の参院選の投票状況
今回の参院選挙、安倍元総理の殺害等波乱があったことも有り、投票率は52.05%、前回選を3.25ポイント上回った。
しかし比例代表の総投票数だけを見ると、実は2019年の前回選挙よりも255万票程減っている模様。
そんな環境下で、与党自民党は前回に比べ約100万票も得票を上積みしており、野党候補には厳しい展開となった。
今回の選挙が参院選で政権選択選挙では無かったこと、多くの人たちの投票行動に影響する主要な争点がほぼ無かった事なども、投票結果に影響を与えたと思われる。
②赤松先生52万票の勝利、しかし……
今回の赤松先生の選挙は、道中かなり厳しい展開もあった。
(事故とかいろいろあったしね)
蓋を開けてみると、結果は赤松先生の得票は「約52万票」で自民党比例代表候補1位での勝利。
実際の選挙状況を分析する。
2019参院選 比例代表 投票総数 約5593万票
2022参院選 比例代表 投票総数 約5338万票
投票率は上昇したものの、投票総数は前回に比べて255万票減っている。
2019年を基準にすると、約4.6%の減少。
これを基準にすると、今回の赤松先生の得票である「528,029票」は、2019年の山田太郎議員の得票「540,077票」の97.8%(2.2%減)に相当する。
つまり、全体投票数が4.6%減の選挙を2.2%減で乗り越えたと言うことは、「2.4%分(票数換算で約1万3千票)の上積み」が発生したと考えられる。
この上積み分は、赤松先生自体の知名度と、ネット等での選挙支援活動の成果であるといえる。
この結果だけ見れば、表現規制反対派は赤松先生の選挙に関しては大勝利だったと言って良い。
ただ、表現規制反対派候補全体としてみると、手放しでは喜べない結果になっている。
③表現規制反対候補、全体的な当落
表現規制反対を訴える主な候補者の当落を確認する。
候補者のピックアップは、下記まとめを参考とした。
【2022年参議院選挙、表現規制反対派と規制推進派の候補一覧まとめ】
確定版・表現規制反対候補派 選挙結果(○=当選、×=落選)
【比例全国区候補】
○赤松 健(自民党)
×藤末 健三(自民党)
×栗下 善行(立憲民主党)
×要 友紀子(立憲民主党)
×松浦 大悟(日本維新の会)
○石井 苗子(日本維新の会)
×たるい 良和(国民民主党)
○仁比 聡平(共産党)
×大島 九州男(れいわ新撰組)
×辻 恵(れいわ新撰組)
【選挙区】
×松尾 あきひろ(立憲民主党、東京選挙区)
×荒木 ちはる(都民ファースト、東京選挙区)
○山本 太郎(れいわ新撰組、東京選挙区)
×乙武ひろただ(無所属、東京選挙区)
×くつざわ亮治(日本改革党、東京選挙区)
×加来 たけよし(日本維新の会、埼玉選挙区)
○松川るい (自民党、大阪選挙区)
×やはた 愛(れいわ新撰組、大阪選挙区)
○小野田 紀美(自民党、岡山選挙区)
上記リスト19人のうち当選5名。
当選者5名の中で、勝因が「表現規制反対派票以外」と考えられる候補は以下の4人。
石井 苗子(日本維新の会)←芸能人
山本 太郎(れいわ新撰組、東京選挙区)←れいわ党首
松川るい (自民党、大阪選挙区)←現役議員
小野田 紀美(自民党、岡山選挙区)←現役議員
つまり、「表現規制反対派票で当選」してるのは、実質赤松先生のみ。
比例代表で言えば、表現規制反対に関連して政治実績のある藤末 健三氏や栗下 善行氏、松浦 大悟氏、たるい 良和氏、表現規制反対団体”連絡網AMI”の立ち上げメンバーである要 友紀子氏も落選した。
④既存の延長にある「表現規制反対活動」の限界と、その打開策
前項の最後で名前を挙げた候補者達は、本来表現規制反対派としてはなんとしてでも当選させて、多数決で動く政治の世界の足がかりとしなければならない候補者の方達だった。
しかし、赤松先生が単独で52万票取った展開の中で、彼らには票が集まらなかった。
この事実こそが、現在の表現規制反対活動の限界を示している。
いくら山田議員と赤松議員が50万票を超える得票をしたとしても、その結果は「彼らだけのもの」に過ぎないからである。
表現規制推進の流れを止めるには、表現規制反対を各政党に働きかけ、国会内で多数派工作をする必要がある。
この動きに必要なのは、複数の表現規制反対派に理解のある議員である。
このような議員を、一人でも多く誕生させることこそが、表現規制拡大を抑え込む力となる。
仮に……本当に「仮に」、赤松先生が獲得した得票の半分(約26万票)を、上手く分散させる事が出来れば、藤末 健三氏、栗下 善行氏、松浦 大悟氏、たるい 良和氏、要 友紀子氏の中から数人、2/3を上手く分散させることが出来れば、彼らを全員当選させることも可能だった。
もちろん、机上の空論であることは承知の上で、表現規制反対派には「票の分散を調整する組織が存在しない」ことが極めて重大な問題であると提起している。
一言で言うならば、「圧力団体が存在しないこと」が最大の問題である。
組織票の分散=票割りが出来れば、表現規制反対に協力する議員や候補者はもっと増える。
同時に、漫画家や作家、作曲家等のコンテンツのクリエイターの方達の多くは、基本的にコンテンツ企業の経済活動に収入を依存しており、コンテンツ企業は経済活動に影響を出してまで政府と対峙することに消極的である。
よって、圧力団体自体は今の「クリエイター主体」の活動ではなく、コンテンツのユーザー=消費者に切替える必要がある。
クリエイターにおんぶに抱っこではなく、コンテンツのユーザーが、供給をしてくれるクリエイターを我々ユーザーが守るべきなのである。
しかし「圧力団体=利権集団」としてその存在を嫌ってきた表現規制反対界隈は、このような動きを呑むことは出来ないだろう。
なぜなら自分たちの活動のアイデンティティが奪われるからである。
これがたぶん現状の延長線上における表現規制反対活動の限界である。
圧力団体のテーマは「表現規制反対派“以外”」でなければ、投票数を超える人数は集まらない。
表現規制反対を含む「表現に関するあらゆるテーマ」を守る団体でなければ。
過去には、そのような動きはことごとく潰されてきた……ふさわしくないとの理由で。
(10年程前にも……ね。忘れてねぇからな_)
AV新法成立の流れを見てもわかるように、特定の道徳的な価値観による表現の規制の流れは今後厳しくなることはあっても緩むことはない。
そろそろ現在の局地的勝利と、その延長の行き詰まりを踏まえた上で、3年後に向けて本気で勝ちに行く時期に来ているのではないか。